開発ノート Vol.4|なぜ “10倍×50mm” を選んだのか

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Suzukazeの「SK-10x50」の倍率と口径へのこだわり

開発ノート Vol.4|なぜ “10倍×50mm” を選んだのか

― 星がいちばん美しく見える“バランス”を求めて

双眼鏡の選択で最も誤解されやすいのが、「倍率が高いほどよく見える」という考え方です。
実際には、倍率と口径は単独では語れず、“どう組み合わせるか” が見え味の大半を決めます。
光学設計というのは、とても繊細なバランスの上に成り立っています。

私たちが “10倍 × 50mm” を選んだのは、天体観測に必要な 光量・視野・安定性・解像力 のすべてを最も高いレベルで両立できる組み合わせだったからです。


<高倍率の落とし穴>

高倍率(12~20倍)の双眼鏡は市場に多くありますが、倍率を上げるほど次の問題が必ず発生します。

・像が暗くなる(相対的に光量が不足する)
・視野が狭くなる
・手ブレが大きくなり、解像度が実質的に低下する
・大気揺らぎ(シーイング)の影響を受けやすい


星空のような暗い対象では、“拡大” だけを追うと見やすさも美しさも損なわれることが少なくありません。


<10倍が“星に向く”倍率である理由>

10倍という倍率は、天体観測ではいわば “基準値” です。

・手持ちで安定して使える最大倍率
・星の点像をにじませずに保てる
・星団、二重星、月面の観察に十分な解像力
・風のある山頂でもブレの影響が許容範囲


また、対物レンズとの組み合わせで生まれる射出瞳径(ひとみ径)<口径÷倍率> が大きく関わります。

射出瞳径(ひとみ径)
50mm ÷ 10倍 = 5mm

この5mmという値は、人間の暗所瞳孔径に近く、夜空を見るうえで最も効率よく光を取り込めるサイズです。
数値だけでなく、“光学的に理にかなった倍率” と言えます。


< 50mm口径を選んだ理由 ― 光量こそ星を見る命>

50mmという口径は、双眼鏡としては大きめです。ただし、天体観測ではむしろ必要なサイズです。

・暗い星雲や星団まで光を集められる
・高いコントラストを保ちながら星の点像を描き出せる
・10倍との組み合わせで明るい視界を維持できる
・暗所性能(低照度性能)が格段に向上する


実際、口径が小さい双眼鏡(30~42mm)では、夜空の淡い光はどうしても不足してしまいます。
星空に向けた双眼鏡は、“光をいかに集めるか” で性能が決まるのです。


<倍率と口径の相互作用>

双眼鏡の性能は、

倍率 × 口径 × プリズム × コーティング × ボディの安定性

これらが“1つの光学系”として調和することで決まります。

10×50は、

・手ブレと解像力のバランス
・視野の広さと像の明るさのバランス
・光量とコントラストのバランス

これら全体の“総合点”が非常に高い組み合わせです。
突出した数字よりも、光学設計の本質であるバランスを重視した結果、最終的に10×50に辿り着きました。


<一般的な双眼鏡に多く見られる設計>

市場にはさまざまな仕様の双眼鏡があり、

・高倍率と小口径の組み合わせ
・価格を抑えるためのシンプルなコーティング
・視野が狭く暗いモデル
・軽量化優先のプラスチックボディ

といった特徴を持つものも広く見られます。

しかし天体観測では、光量・視野・安定性が揃わなければ、スペック上の数字だけでは美しい視界は実現しません。
SK-10x50は
“星空での理想条件” を中心に組み上げた光学設計で、数値上の単純比較では測れない、見え味に誠実な仕様になっています。


<星を美しくするのは、数字ではなく設計思想>

双眼鏡を空へ向けた瞬間、星がにじむか、浮かび上がるかは、倍率と口径の数値よりも両者のバランスで決まります。
「10×50」は、星の淡い光を大切に扱い、そのままの美しさで届けるための、私たちの思いを乗せた“設計上の回答”です。

見え味をやみくもに誇張せず、
静かに、正確に、透明に。


その自然の美しさを堪能できる見え方を支えているのが
星空双眼鏡「SK-10x50」の光学設計です。


★Suzukaze「SK-10x50」の詳細はこちら
 ↓ ↓ ↓
https://suzukaze.co.jp/product/sk-10x50


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